展覧会
The Flow
- アーティスト
- Cresk・Nguyễn Tấn Lực
- 会場
- no.160・1区

ストーリー
ひとりの女性が街を走ります。左にはかつてのサイゴン、右には今のサイゴン、頭上にはこれからのサイゴン。彼女の肩には、私たちの店の番号が描かれています。
彼女は今を生きるサイゴンの女性です。目を閉じ、肩の力を抜いています。街を目で追う代わりに、肌で感じています。彼女のまわりに街を形づくるのは、ガイドブックに載らない光景です。流れるようなバイクの列、プラスチックの腰掛けに置かれたアイスコーヒー、手描きの看板、電線、路地や市場の断片。
コラージュが途切れるところから線が流れ出し、石のまわりで水の流れが穏やかになるように、彼女を包みます。街と女性は、一枚の絵の中に溶け合っています。
Nguyễn Tấn Lựcは、Creskの名で活動しています。サイゴンのグラフィティ・壁画集団Walloversの共同創設者で、10年以上にわたり絵を描いてきました。その間に、彼が描いた壁のまわりでは、街の姿が何度も変わりました。
原点は、ここから離れたブンタウの一枚の壁です。少年だった彼はその壁を見て、自分も描きたいと思いました。その後、二つの学校でグラフィックデザインを学び、最後に選んだのはスプレー缶でした。
彼が描くのは、ほとんどいつもベトナムの女性です。装飾や伝統の象徴としてではなく、日々を担うひとりの人として。大規模な作品には、グエンフーカイン通り沿いの壁にベトナム各地を描いた『Vietnam on the Wall』があります。Walloversとして、路上でもギャラリーでも作品を発表しています。
この壁で彼が問いかけたのは、時間についてです。かつてのサイゴン、扉のすぐ外にあるサイゴン、そしてこれからのサイゴン。三つの街をひとりの女性のまわりに配し、彼女は目を閉じたまま、その真ん中を走り抜けます。どの街かを選ぶのではなく、街が移り変わるなかで、彼女だけは変わらずにいます。
Richieは消えゆくものを描き、Creskは訪れつつあるものを描きます。二つの壁には、同じ街が異なる時間の流れで映し出されています。
この壁画がここに残ることを条件に、彼は引き受けました。その約束どおり、今もここにあります。
壁画は、この家とともに残ります。ここにある作品で、唯一販売していないものです。
入り口の二本の柱も、同じ作品の一部です。左の手は、触れること、手仕事、身体で感じるもの。右の閉じた目は、もうひとつのものの見方。流れる線が両方の柱を渡り、扉へと続きます。
中の壁が風景だとすれば、二本の柱はそれを縁取る額縁です。
